京都国際映画祭では元・立誠小学校で日本の伝統工芸体験ができるワークショップも行われています。そのうち、10月18日(土)には田中製紙工業所による和紙漉き体験のワークショップが開かれました。
ワークショップは、京都府指定無形文化財にも指定されている丹後和紙を守り、伝承している田中製紙工業所の田中敏弘さんを迎えて開催。おかけんたによる司会進行のもと、前半は丹後和紙に関する講義が行われました。
京都市福知山市の鬼退治伝説で名高い大江山周辺で栽培されている楮(こうぞ)から作る丹後和紙。春に植え、その年の秋口に刈り取った楮の皮を剥ぎ、大きな釜で蒸して、柔らかくしたものを炊き、さらに傷や汚れを取り除いて漂泊し、約2時間トロトロに溶かした状態になったものを紙漉きに使用するそう。皮をはぐ前の乾燥させた楮を用いて、その説明される田中さん。参加された方々は熱心に耳を傾け、実物の感触を確かめていました。
続いては、いくつかの代表的な和紙について説明がありました。
原材料から和紙を作る会社は珍しく、全国でも田中製紙工業所のほかに数社しかないそうです。そのうち、漆濾し紙(うるしこしがみ)として使われる典具帖紙(てんぐちょうし)を作っている会社は他に1社だけだそう。典具帖紙は羽毛のように柔らかく、透き通った紙ですが、耐久性が強く、古くから漆をろ過する際に使用されていました。最近ではちぎり絵や押し花にも使われるそうです。
典具帖紙より厚めの楮紙(ちょし)は賞状などによく用いられるそう。地元の小学生は紙漉き体験を通じて、自身の卒業証書用の紙を作るとか。
そして楮紙よりさらに厚いのが、もみ紙。強性紙(きょうせいし)とも呼ばれ、のり加工がされており、通常の楮紙と比べてもかなり耐久性があるのだとか。紙布として座布団やまくらカバーとしても使われているそうです。
ほかに楮の繊維質の特徴を生かした雲龍紙もありました。ピンク色に染められた染の雲龍紙、傷や汚れを丁寧に取り除いた最高級の白の雲龍紙、その反対に楮をそのままを用いた皮雲龍紙など、同じ素材でも製造工程の違いでさまざまな風合いを出す和紙の特性に、参加者は興味深々といった様子でした。
そして後半は紙漉き体験を。紙漉きは、紙漉きげたという木枠を用います。とろとろに溶かした楮にオクラの根から抽出した粘膜を混ぜた液体を水槽に流し込み、よくかき混ぜた後に簾を挟んだげたですくい上げます。そしてゆらゆらと揺らしながら濾すという作業を3回繰り返し、簾に残った液状の紙を丁寧に剥して乾かすと、和紙が完成します。この日は紙漉きまでの体験でしたが、女性や小学生の男の子、京都在住の外国人の方がチャレンジ。田中さんのフォローを受けながら、紙を漉く作業を楽しんでいました。