17日、よしもと祇園花月で特別上映企画「日本喜劇映画の神様 斎藤寅次郎」「喜劇映画のルーツ ファッティとキートン」が開催されました。
「サイレント映画特集」として、世界の喜劇映画の原点を探る本プログラム。サイレント喜劇映画の傑作を、活弁とピアノ演奏と合わせて上映。さらによしもと芸人が活弁にチャレンジするコーナーも用意されるなど、映像と音のコラボレーションによる新しい映画の見方を提案する特集となりました。
この日はまず、「日本喜劇映画の神様 斎藤寅次郎」を実施。「男はつらいよ」の主人公、フーテンの寅こと車寅次郎の名前は、喜劇の神様である斎藤寅次郎の名前が由来であることは知る人ぞ知る事実です。彼はその生涯で、ばかばかしいナンセンス喜劇や人情喜劇など、200本以上の喜劇を量産してきました。巨匠・小津安二郎とは兄弟弟子の関係で、ほぼ同時期に活躍したものの、しかし、彼の無声映画のほとんどが散逸しているのです。この日は彼の映画の魅力を語りながら、『モダン怪談100,000,000円』『爆弾花嫁』『子宝騒動』の3作品を一挙上映しました。
こちらのプログラムには活動弁士の澤登翠さん、ピアノ演奏の柳下美恵さん、大阪芸術大学の太田米男教授、そしてCOWCOW、清水圭が来場。「斎藤監督の映画を封切り時に観ているのは僕くらいでしょうね」と語る中島実行委員長は、「サイレント映画は(前身である)京都映画祭でも、しばしば上映してきました。京都映画祭のいいところは残していこうということで、このプログラムを残したわけです」とあいさつ。太田教授も「映画の原点はサイレント映画。お客さんを楽しませるコメディなんですよ。そして日本の喜劇なら斎藤寅次郎。京都国際映画祭はここからスタートしなければいけないなと思いました」と付け加えました。
活弁、ピアノ演奏付きで上映されたサイレント映画を堪能した来場者たち。表現豊かなその上映スタイルに、「すごいですね」と清水圭がコメントすれば、COWCOW多田も「迫力がありますね」と感心した様子。そんなCOWCOWの二人に、中島実行委員長が「二人も活弁をやってみたいだろ? やるべきだね」と促すと、会場からは大きな拍手がわき起こります。澤登さんも「二人のファッションを見ただけでも絶対に面白くなりますよ」とワクワクが止まらない様子。さっそくこの日上映予定の『子宝騒動』から2分ほどの映像を抜き出し、COWCOWの二人がそのシーンの活弁にチャレンジすることになりました。
その後、無事に活弁をやり遂げた多田は「フルマラソンを走りきったような気分」と充実した表情。中島実行委員長も「これで飯の種が増えたね」と二人をねぎらいました。そしてその後は、澤登さんの活弁、柳下さんのピアノ演奏で『子宝騒動』を上映。次々と繰り出されるベタベタなギャグの数々に「これは吉本新喜劇の原点ですね」と感銘を受けた様子の善し。米田教授も「今につながるギャグの原点なので、勉強になると思います」と同意しました。
次のプログラムでは、「喜劇映画のルーツ ファッティとキートン」を開催。こちらでは引き続き、澤登さん、柳下さん、清水圭、米田教授が参加したほか、サバンナ、喜劇映画研究会の新野敏也会長がそこに合流しました。こちらのプログラムでは、チャップリン、ロイドと並ぶ世界の三大喜劇王の一人・バスター・キートンと、彼をデビューさせたロスコー・"ファッティ"・アーバックルがコンビで出演する映画を特集しました。
この日はキートンのデビュー作『デブ君の女装(ファッティとキートンのおかしな肉屋)』『デブの自転車屋』『デブのコック』という3作品を上映。太った体で機敏な動きを見せるファッティの身体能力の高さに、サバンナ、清水圭たちは驚きを隠せません。さらにこちらでは、サバンナの2人が活弁に挑戦。「ポイントはファッティとキートンの掛け合いだから」とアドバイスを送る米田教授に、高橋が「僕ら最近、コンビで仕事していないですから」と冗談めかすと、「まだええやん。俺は(相方には)もっと会っていないから」と自虐的にたたみかける清水圭。その言葉に会場は笑いに包まれました。
その後、関西弁を交えた活弁を披露した2人に、米田教授は「とても面白かった」と称賛。「先生がそう言うのならそうなんかな」とまんざらでもない顔の高橋に、「どんだけうれしそうやねん」とツッコむ八木。さらに澤登さんまで「関西弁が面白いのと、(2人の活弁に)ゆとりがある。それがほんわかとしたファッティののどかさがあるんですよね。2人は初めてでしょ。すごい。弟子にしてください」と絶賛する一幕もあり、高橋も「僕らは褒めて伸びるタイプですからね」と鼻高々な様子でした。
そしてこの日の上映を終えた米田教授は「これからも続けて第2回、第3回と、もっと面白い作品を集めていきたいなと思います」とさらなる展開を呼びかけました