作家、脚本家、さらには映画監督、演出家など数多くの顔を持つ、大宮エリーさん。
テレビなどで見かけることも多い彼女が、アートに特化した展示などを行っている会場、元・立誠小学校で朗読会を行いました。
朗読会といっても、そこはエリーさん。ただ朗読するだけではありません。
国内外で数多くの公演を行い、高い評価を得ている「栗コーダーカルテット3/4」、そして沖縄発シネマティック・ジャム・ユニット「CHINEMA dub MONKS」を主宰する曽我大穂さんとのコラボレーションイベントとして、この朗読会は開かれたのです。
朗読会が行われたのは、校舎1階にある「保健室」。
ステージは黒板を背負う形で設置され、脇には保健室として使われていた名残りか、流し台が残されています。
会場は通常の教室くらいの広さ。
そこにお客さんが詰めかけ、50席以上ある座席は全て埋まり、18時の開演時には満員御礼。
立ち見も出る盛り上がりを見せています。観客の多くは女性。そこに男性がちらほらといった感じ。
開演予定時刻を少し過ぎたころ、エリーさんがひょっこりといった感じでステージに現れました。
まずは第一部。
栗コーダーカルテット3/4とのコラボがスタートします。
朗読が始まるのかと思いきや。
立ち見の観客がかなり窮屈そうにしているのが目についたのか「一歩ずつ前に! 気持ちを合わせて」と移動を指示。
子供に「イスは大丈夫?」などと声をかけ、細やかな心遣いを見せるエリーさん。
客席にほどよくスペースが出来てから、いよいよスタートです。
「曲やろうよ」という栗コーダーのメンバーに、エリーさんは「ちょっと喋らせてくださいよ」と、トークを開始。
個展に来てくれたことのある人は? 栗コーダーを見に来た人は? 笑いに来た人は? など、客席に話しかけていきます。
合間には足元に置いているアルコールをグビリ。
すっかりリラックスしているエリーさん。そろそろ一曲目が始まります。
栗コーダーのメンバーから「いつもは笛4本でやってるんですが、3番目のパートをエリーがバイオリンで弾いてくれる、なかなか聞けないスペシャルバージョンです」と紹介があり、いよいよ1曲目「ピタゴラスイッチオープニングテーマ」が演奏されます。が、始まる前に「ちょっと待って! 音、合ってるかな? 1回しか練習してない」とエリーさん。
しかし、栗コーダーのメンバーが「曲が短いから、失敗したらやり直そう」とやさしくアドバイス。
そのかいあってか、無事演奏終了。
客席から拍手が起こります。次の曲「エリゴラスイッチ」は、エリーさんが日々やらかしたネタを話したあと、ピタゴラスイッチのテーマでオチを付けるというネタのような曲のような作品です。
お酒にまつわるやらかしたネタとは、人気ミュージシャンにアルコールでご迷惑をおかけしたエピソード。「やらかしちゃったな〜」のセリフのあと、コミカルなテーマが流れ、客席からは笑い声が起こります。
そして「朗読なんかしちゃいますか?」と、いよいよ朗読がスタート。
一つ目は「ある砂浜に…」という読み出しから始まる作品。
海を思わせるウクレレやリコーダーの伴奏が、朗読にビタリとハマっています。
約5分の朗読が終わったあと「うまくいきましたね」と笑顔でビールを口にするエリーさん。「しゃべって朗読の時間が無くなるから、今日はきっちりやるぞ」と気合も十分の様子。
2つめの作品はリズミカルな伴奏が印象的な「白くなりたい」。そして「出番待ちというお話です」というエリーさんのコールから3つめの作品がスタート。
恋をするホウキの切ない気持ちを、少し悲しげなリコーダーのメロディで聞かせます。
次の作品、猿の宇宙飛行士の話では演奏に口琴(こうきん)が使われました。「ビヨ〜〜〜ン」というその特徴的な音に、エリーさんも「すごいですね〜」と感心しきり。口琴で話せるという栗コーダーの関島さんが、口琴を使っていろいろな言葉を聞かせてくれます。
大物タレントやオネエタレントとのエピソードなどを挟みながら、次は以前京都で個展を開いた時に作った散文を紹介。
これも切ない恋のお話です。
続いて「生きているということ」。リズミカルでユニークな演奏で始まりますが、そこからお話が不思議な世界観に包まれていくに連れ、曲調もミステリアスなものに変化するなど、いろいろなイメージが喚起される作品でした。続いての大物ミュージシャンと飲みに行った話で客席は大盛り上がり。
映画スターウォーズからの「帝国のマーチ」のあと、第一部は、みんなが知っている唱歌「もみじ」、そして「ふるさと」の演奏で終了しました。
10分間の休憩のあと、曽我大穂さんとの第二部がスタート。
さっきまでとは違って、ステージには2人だけ。それぞれが音の状態を確かめたり、チューニングしたりしているうちに、いつの間にか演奏が始まります。悲しげな旋律を奏でるバイオリンに、床を踏み鳴らす音、スピーカーからはノイズのような声が聞こえるこの曲。あっという間に会場は緊張感のある雰囲気に一変。が、演奏が終わると、さっきまでと全く変わらないエリーさんのトーク。
曽我さんは日本酒の鬼ころしを、エリーさんは白ワインとビールを飲みながら、ライブがゆるゆると進んでいきます。
「彼に子供が生まれたときに作った曲で、すごくいい曲だな〜って。それちょっとやってみます」という話から二曲目がスタート。メランコリックな曲に合わせて、照明も会場をくるくると周ります。
次は「おかん」をテーマにしたネタ的な一曲。エリーさんのおかんの爆笑エピソードが次々と繰り出される迷曲?でした。
そして朗読。エリーさんが「海に行くやつね」と曽我さんに伝えて、ダイビングに行く夫婦のお話が始まります。スティールパンにエコーを効かせた、水の中をイメージさせる音をバックに、ささやくような声で朗読するエリーさん。「スーッ、スーッ」という呼吸音に伴奏が合わさって、まるで本当に海の中にいるようでした。間を空けずに「月と少女」というお話へ。
キラキラとした音色が会場に響くなか、月と話ができる少女の物語が朗読されました。曲の合間にエリーさんはビールをグビリ。京都で個展をやったときの、これまたお酒にまつわるエピソードのあと「お能やってみてよ」というエリーさんのリクエストに、曽我さんがいきなりマイクに向かってお能的な叫び声を発し始めます。それにバイオリンを合わせるというなんとも奇妙な一曲が終わったあと「やりたくなかった」とつぶやく曽我さんが印象的でした。
次は、客席に「どんなのがいい?」とリクエストを募ります。「楽しいやつ」というオーダーに応えて、リズムマシーンで70年代っぽいビートを出すように指示。夜景、モツ煮、焼酎などユニークなワードが散りばめられたエリー流ラップ? が演奏されました。
そして、いよいよライブも大詰め。もう一度栗コーダーのメンバーもステージに登場します。それぞれの活動やCDの告知などを行い、ラストの一曲を演奏。一部、二部合わせて、2時間以上のステージが幕を降ろしました。