10月16日、よしもと祇園花月でオープニングプレミア上映『at Home』の舞台挨拶が行われました。「京都国際映画祭」の記念すべき最初の上映作品『at Home』は、2015年に劇場公開の予定。今回は出演者の皆さんによる舞台挨拶に加えてワールドプレミア上映ということで世界でもっとも早くこの作品が楽しめるということもあり、数多くのお客さんが会場に駆けつけました。
舞台挨拶に出席したのは、竹野内豊さん、松雪泰子さん、黒島結菜さん、池田優斗さん、板尾創路、千原せいじ、そして蝶野博監督。司会のα-STATIONのDJ・森夏子さんの案内により、出演者の皆さんと監督がステージに姿を現すやいなや、お客さんから大歓声と大きな拍手が沸き起こりました。
『at Home』の軸となるのは、あるごく普通の家族。しかし父親(竹野内豊さん)、母親(松雪泰子さん)は、実はある別の顔を持ち合わせています。その別の顔とは…。そんなある日、母親が事件に巻き込まれてしまい……。実はこの家族は血のつながりがないことも大きなカギに。ストーリーの中で、それぞれが背負う苦しい過去も次第に明るみになります。
まずご挨拶をしたのは、父親役を演じた竹野内さん。「記念すべき京都国際映画祭の第1回の上映に参加することができて、光栄に思っています」と語りました。続いて母親役を演じた松雪さんは、「今日は、歴史のある劇場で皆様に初めて『at Home』を見ていただけるということを楽しみにしていました。とてもうれしく思っています」とご挨拶。続いて、2人の長女を演じた黒島さんは「初めての舞台あいさつで緊張しています」とフレッシュなコメントを。池田優斗さんも「今日、初めてレッドカーペットを歩いて、緊張したけど楽しかったです。いい思い出になりました」と子どもながら大人びたコメントでお客さんを沸かせていました。蝶野博監督は「僕も実は関西人で、滋賀出身です。だから、ここ(よしもと祇園花月)には、祇園会館のときに3本立ての映画を見に来たりしていたので、すごく思い出のある場所でこういうことができて本当に光栄です」と思い出とともに喜びを語りました。
「今日が本当に初めての上映ということで、監督の率直な感想を聞かせていただけますか」と尋ねられた蝶野監督は「この作品は企画が立ちあがってから完成まで2~3年かかっているんですが、6月に撮影を開始して9月に完成したばかり。本当にできたてホヤホヤの映画です。なんとか完成した作品なので、見ていただけるのは緊張するというか、不安と期待でいっぱいです」とのこと。
また、最初に台本を読んだときの感想を聞かれた竹野内さん。「家族の形には正解がなくてそれぞれだと思うんですが、心満たされないこの時代に、血縁がなくても傷ついた人間たちがこれほどまでに絆や家族以上の深い愛情を感じているんだなと。私は普通になんの不自由もなく両親に幸せに育ててもらい、『家族は家族だよな』と思っていたんですが、台本を読み終わった時に『家族ってなんだろう』、『血縁ってなんだろう』とすごく感じました。きっと、この映画をご覧になって皆さんが感じた気持ちは、私が台本を初めて読んだ時の気持ちとたぶん同じのはずです」としみじみ語りました。松雪さんは「すごく温かい脚本で、ストーリーやキャラクターはもちろん、脚本としての構造も行間があります。そこに流れる空気感が、脚本から映画になったときにどのように変化していくんだろう? とすごく楽しみです。それぞれのキャラクターの背景を蝶野監督はすごく見事に表現されていて、説明するまでもなくじわっと心の中に染みていくような、美しい作品だと思いました」と語りました。
また、子役の2人からは撮影中の裏話も。黒島さんは「私は沖縄出身なんですけど、お父さん(竹野内豊さん)とお母さん(松雪泰子さん)と地元の話をよくしました」と、撮影以外でもたくさんコミュニケーションを取っていた様子。池田さんは「よく遊びました。手遊びとか、抱っことかしてもらってすごくうれしかったです。(竹野内豊さんに)『高い、高い』をやってもらって、パパにやってもらうよりめちゃくちゃ高くて、すごくおもしろかったです」と心和むエピソードを披露していました。
千原せいじは「今日は吉本が仕切ってるんですよね。本当に皆さんに申し訳なくて」と頭を下げます。その理由とは「昼に(現場に)入ってからこの時間まで休憩がなくて、飴玉しかなくて。今、祇園花月に入って待ち時間があったんですけど、八ツ橋でも買ってきたらいいのに。本当に皆さん、申し訳ない。(お腹が)グーグーいうてんねん。みんな、あとでおいしい店教えるわ」とぶちまけ、出演者の皆さんも思わず苦笑い。竹野内さんがせいじに「おいしい店はどこですか?」と尋ねると「とりあえずバーやったら、花見小路のビル4階にある『せじバー』と……」と教えると、板尾がすかさず「自分の店の宣伝やないか!」とツッコみ、皆さん爆笑。撮影中も賑やかだった様子が伝わって来るようでした。
また、今回の舞台挨拶には登壇していませんでしたが、この映画にはウーマンラッシュアワー・村本も出演。「村本さんの印象はどうでしたか?」と尋ねられた蝶野監督は、「お芝居をするのは初めてと聞いていて、最初は『僕はどうしたらいいですか?』と緊張しておられたんですが、途中から慣れたのかコロッと態度が変わって、撮影が終わったあとに松雪さんに『お食事でも行きましょうよ』と言っていて(笑)。でも、即断られていましたけど」と暴露していました。
また、板尾には「(役を)演じてみていかがでしたか?」という質問も。「主役の2人がおっしゃっていたとおり、台本の時点ですごくおもしろくて、これが映像になるんだな、自分にこの役が与えられたんだなと思うと、楽しくやることができました。あと、この映画は音楽もとても重要だなと思いながら読んだ記憶があります」と語り、「ちなみに、腹はすごく減ってます。お腹が減ってなかったらまた変わってきます」とも。その言葉を受けて、せいじは「やっぱりや! 思ってたとおりや!」とニヤリと笑っていました。
また、撮影時、印象的だったエピソードも語られました。
竹野内さんは「撮影時期はちょうど梅雨時だったので、雨には悩まされましたね。あとは、設定上、血のつながりのない家族だったんですが、実際に最初はちょっと距離を見ながら、少しずつ徐々に絆を深めていった感じでしたね」とリアルなエピソードも。さらに「(池田さんに)『高い、高い』もかなりずーっと(笑)。運動不足だったので、『これはいい運動になるな』とずっとやってました」と笑顔。松雪さんも「家族でいる時間が本当に長かったので、その意味でも本当にみんなでたくさんお話して、とても穏やかな、タイトル通りアットホームな現場でしたね」と優しくほほえんでいました。
蝶野監督は、「非常に順調な撮影だったんですが、この映画はいろんなパターンがあって、竹野内さんと松雪さんのシーンは、しっとりと落ち着いた撮影でした。子どもたちの撮影のときは、とにかく2人でキャッキャとしていてうるさかったです(笑)。あと、板尾さんとせいじさんのときは、板尾さんは大人だったんですが、せいじさんは明るい、といいますか」と言葉を濁し…。板尾が「最初はみんな笑うんですけど、だんだん腹立ってくるでしょう?」と助け舟を出すと、蝶野監督も「そうそう(笑)。そんな感じです」と思わず苦笑していました。
そしていよいよ上映時間直前。
改めて、竹野内さんは「家族に傷つき、家族に救われた者たちの物語です。改めて、『家族ってなんだろう』と少しどこかで感じていただけたらと思います」、松雪さんも「とても美しい作品です。見終ったあとは、すごくすがすがしい感覚が流れていきます。じっくりと楽しんでください」としめの言葉を。蝶野監督は「タイトルが『at Home』というのをどういう風に解釈してもらえるのかなと思っています。家族という意味でもあるし、家という意味でもあるので、そのあたりを感じてもらえたらうれしいです。もし今日、これから見ていただいて、感じるものや心に残るものがあれば、公開が来年なので口コミで広めていただけたらと思います」と語りました。