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池乃めだか、内場勝則、月亭八光、ミルクマン斉藤さんが舞台挨拶&トークショーで『ダーティハリー』の世界を語る!

2014-10-18
レポート
10月18日(土)、よしもと祇園花月で、京都国際映画祭モスト・リスペクト賞を受賞したクリント・イーストウッド氏の代表作品のひとつ、『ダーティーハリー』が上映されました。
モスト・リスペクト賞とは、世界的に著名な俳優や監督を讃え敬意を払うための賞。初の記念すべき受賞者のクリント・イーストウッド氏は、俳優、監督として大成功をおさめ、80歳を超える今もなお現役の映画俳優として多大な影響を与え続けています。
『ダーティハリー』上映後に行われた舞台挨拶&トークショーには、池乃めだか、内場勝則、月亭八光、そして映画評論家のミルクマン斉藤さんが登壇しました。

ミルクマン斉藤さんは、京都出身の映画評論家。
八光に「これまでどれぐらい映画を見はったんですか?」と尋ねられると、「今年で51歳なんですが、17~18歳からずっと見てきているので何千本でしょうか…。年間では数百本観てます」とミルクマンさん。それを受けて「俺も結構見てるで!」と池乃も張り合います。「もう数えられへんぐらい見てきたで。それこそ昔はタダで映画が見られたときもあったからね。『リンゴ園の少女』とか」と『リンゴ追分』を歌い出し、八光は「話が古い! この話、一体誰がわかるんでしょうか?」とタジタジ。
すかさず内場が「でも師匠はいまだに子供料金で映画館に入れますもんね」とフォロー(!?)し、お客さんを沸かせていました。
『ダーティハリー』の感想も語り合いました。池乃は「人権問題に絡んだ場面があったけど、難しいことは抜きにして、オレが映画の中に入れるもんやったら機関銃を持って行って犯人を撃ってやりたい!」と、ダーティハリーことキャラハン刑事を翻弄した“さそり座の男”と名乗る殺人犯に相当ご立腹の様子。「なんで権力や人権が、あんな犯人を守るのか」と納得できない様子でした。
ミルクマンさんいわく、「60年代のアメリカの風潮ですね。あの当時は人権問題がすごく取り上げられていて、一時期は加害者側の人権を守ろうという風潮があったんです。確実な証拠がないと逮捕ができなかった」とのこと。
それを聞いて池乃は、「こんなん言うていいんかわからんけど、人権にうるさいアメリカかもしれんけど、一番人権が守れてないような気もするけどねぇ」と言うと、「まさにその通り!」とミルクマンさん。「イーストウッドとドン・シーゲル監督はそれを『おかしいやないか!』とこの映画を作ったと思うんです」と解説。
これには内場も「深いですね~」と納得。
それゆえ、『ダーティハリー』が公開された当時は、「ダーティハリーこそ正しい」という意見と「間違っている」という批判で、評論家、世論が真っ二つに分かれたといいます。「それだけ画期的な映画だったということですね」というミルクマンさんの解説に、一同「ほぉ~」と感心しきり。
また、クリント・イーストウッド氏の話題にも。内場が「クリント・イーストウッドさんといえば、マカロニ・ウェスタンですね。『夕陽のガンマン』とか」と語ると、ミルクマンさんの口から意外な事実が。「マカロニというだけにイタリアなんですが、イーストウッドはイタリアに行ってから映画の大スターになったんです。その前はアメリカで『ローハイド』というテレビシリーズがあって、テレビ西部劇のスターとしてイタリアに呼ばれたんですが、セルジオ・レオーネという大監督に出会い、才能を開花させました。
その後、『夕陽のガンマン』で大スターになり、アメリカに凱旋帰国みたいな形で帰ってくるんです」。そして『ダーティハリー』で一躍、押しも押されぬトップスターに上りつめたそうです。

さらにあるワンシーンの裏話もミルクマンさんから明かされました。
「ドン・シーゲル監督は、40年代から娯楽映画を撮り続ける最高峰の監督のひとりなんですが、イーストウッドは彼にとてもかわいがられていました。『ダーティハリー』の、ビルの屋上に自殺志願者が出てくるシーンがあるじゃないですか。あそこはイーストウッドが監督したそうですよ。ドン・シーゲル監督がインフルエンザで倒れた時、イーストウッドが『オレが撮りたい』と言ったら『撮れ、撮れ』となったそうです。ただし、ビルのシーンの撮影だけで1週間もかけたため、『金の使いすぎや!』と会社に言われたそうですけど(笑)」と激白。
内場は「確かにあれはいいシーンでしたよね。ダーティハリーと呼ばれる所以を描いているようで」としみじみ。

また、池乃を立腹させた“さそり座の男”と名乗る殺人犯は、実際の犯罪者がモデルだという話も飛び出します。ミルクマンさんは「60年代に、アメリカで“ゾディアックキラー”という連続殺人鬼がいまして、謎の殺人鬼でまだ犯人が捕まっていないんです。それが元になっています」と明かし、「60年代はけっこう、危ない人が問題になっていた頃なんです。この映画でも、サイコパスといった精神鑑定の問題も投げかけています」と語ると、「現代の映画の基盤がありますよね」と内場。ミルクマンさんも「この映画がなかったら、連続殺人事件をテーマにしたような映画は生まれなかったのではないかと」と、その偉大さを語りました。
ちなみにクリント・イーストウッド氏は『ダーティハリー』当時は41歳だったそうで、現在は84歳。
八光が「今回、『賞を受賞されましたよ』と伝えると、『今まだ仕事中やから行かれへん』とのことでした」と言うと、「今も年1本のペースで映画を作ってはりますからね」とミルクマンさん。かたや、現在71歳の池乃は、「最近、なんかあっちの世界のことばっかり考えてるわ…」と寂しげにつぶやきましたが、八光に「あっちの世界のことばっかり考えてる人が前髪染めませんよ!」とツッコまれていました。
不朽の名作の魅力と裏話がたっぷりとつまったトークショーとなりました。