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映画もアートも京都から世界へ!「第1回京都国際映画祭」プログラム発表会見

2014-09-04
レポート

きたる10月16日(木)〜19日(日)に行われる「第1回京都国際映画祭」のプログラム内容・詳細が決定し、9月4日(木)、発表会見が行われました。1997年度から「映画都市・京都」を世界に発信するため開催されてきた「京都映画祭」の志を継承しつつ、京都の皆さんや京都を愛する皆さんと一緒になって、新たな映画文化を創り上け?るべくスタートする同映画祭。「映画もアートもその他もぜんぶ」というテーマの通り、映画、映像にとどまらずアートの分野にも視野を広げた、バラエティ豊かな作品・イベントが揃いました。

会見の司会は、木村祐一とKBS京都アナウンサー・平野智美さんが担当。木村はポスタービジュアル等に使われているキャッチコピー「京都は、人を試す。」を取り上げ、「僕もいろいろ試されて育てられました」としみじみ。「京都の人は、追求するというか、芯の部分を探るところがある。純粋にいいものを楽しみたいという人たちが暮らす街」と言い、地元での映画祭開催に「素敵なワクワク感でいっぱい」と期待をふくらませます。

まずは、京都市の藤田裕之副市長が挨拶を。大の映画好きである門川大作市長の代理として出席した藤田副市長は、京都が日本の映画発祥の地であること、日本映画を牽引する存在であったことに言及。「一昨年、惜しまれつつ閉幕した『京都映画祭』が、今回、多くの皆さまの尽力の中、国際映画祭として復活できることは京都市民としてうれしい」と新たな映画祭誕生を喜びました。

続いて登壇したのは、吉本興業代表取締役会長・吉野伊佐男。「『京都映画祭』を継承しつつ、新たな映画文化を作り、京都からアジア、さらには全世界へと発信していきたい」と決意表明しました。

「2年前『京都映画祭』が終了することになったが、その後、新しい展開として、吉本興業さんから『もっと規模を大きくしてやろう』というお話をいただいた」と同映画祭発足の経緯を説明したのは、実行委員長を務める映画監督・中島貞夫さん。「(『京都映画祭』は)文化的側面からのみ見てしまう傾向にあったが、フェスティバル、お祭りは吉本さんの方が上手。京都の映画の歴史も念頭に置きながら(新たな映画祭を)作っていければ」と意気込み、「今年は初年度ですが、もっともっと拡大していきたい。またせっかく京都でやる映画祭なので、文化観光の一助になればという部分も大きい。皆さんに楽しんでいただけるものになっていくだろうと思います」と話しました。

ここからは、より具体的な内容についての説明へ。まずは「映画部門」についての紹介です。登壇したのは同映画祭総合プロデューサーの奥山和由さん。奥山さんは冒頭、「ベテラン、先輩方が素晴らしい作品を作ってこられたことへのリスペクト」「若い世代の中から才能を見つけてバックアップすること」のふたつが同映画祭の大きな柱だと解説。「このふたつをつなぎ、世界に発信するのが(同映画祭の)大きな目的」と語ったほか、「京都でなければできない映画祭」でもあるとし、「国際都市の懐の中で、特徴ある映画祭に」と目標を掲げました。

こうした考えのもと、新たに設けられたのが「モスト・リスペクト賞」。初年度は、俳優、監督として大成功をおさめ、80歳を超えてなお現役の監督として世界中に多大な影響を与えているクリント・イーストウッドさんに贈ることが決定。同時に、京都市とパリ市の友情盟約締結にちなんだ「モスト・リスペクト賞 in Paris」を、『ふたりのベロニカ』などで知られる女優、イレーヌ・ジャコブさんに授与します。

一方、日本映画界においては、1958年に創設された歴史ある賞「牧野省三賞」が、引き続き日本映画の発展に大きく貢献した制作関係者に与えられるほか、「三船敏郎賞」を新たに創設。国内にとどまらず世界的にも高い評価を受ける名優・三船敏郎さんの名を冠し、国際的な活躍を期待される俳優を表彰していきます。「審査員にも野中照代さん、山田洋次さん、橋本忍さんなど誰もが認める日本映画を担ってきた人々に参加していただく」と奥山さん。第1回の受賞者は、いったい誰になるのでしょうか。

そして、「日本映画のウォーキングディクショナリー」(奥山さん)と言われる同映画祭スーパーバイザー・春日太一さんにバトンタッチ。映画史研究家であり著書も多い春日さんは「かつて京都は世界的ブランドの映画文化発信地だったが、今は存在感がなくなってしまっている。もう一度、京都から世界に映画を発信できれば」とコメント。「三船敏郎賞」を「その大きな役割を担うひとつ」と位置づけ、「三船さんは世界で高い評価を受けている俳優。その名前を付けた賞を作ることで、日本映画を世界に発信するメッセージになる」と、創設の意図を明かしました。ほかにも1966年に大映京都撮影所で制作された『大魔神』シリーズの特集上映などさまざまな見どころを語り、「(作品を見ることで)京都は伝統文化を大事にするだけでなく、革新的なことも行ってきた地であることがわかるはず」と語りました。

この後、上映作品の紹介を経て、今度は「三船敏郎賞」の審査員を務める野中照代さん、三船史郎さんと春日さんがトークショーを展開。数々の黒澤明監督作品にスクリプターとして携わってきた野中さんは、「いま、三船さんを知る人はほとんどいなくなっちゃった。『羅生門』で最後に泣いていた赤ん坊が生きているぐらいじゃないかしら。三船さんは俳優の中では歴史とともに特別な人。名前を忘れてもらいたくないという意味でも賛成しました」。史郎さんは「身内として非常にうれしい。三船本人もうれしく思っているはずです」と喜び、世界的な人気・評価については「演じる役が直線的で単純明快。わかりやすくて外国人受けしたのでは」と分析していました。

さらにもうひとりのゲストも登場。オープニング作品『at Home』、「TV DIRECTOR’S MOVIE」プロジェクトのひとつとして上映される『振り子』の2作品に出演している板尾創路が、それぞれの見どころを語りました。鉄拳のパラパラ漫画を映画化した『振り子』は既に沖縄国際映画祭でお披露目されましたが、「鉄拳も泣いていたし、お客さんのすすり泣く声も多くて。漫画が世界的にすごいので、それを映画にするのは監督も俳優もすごいプレッシャーだった」と振り返ります。『at Home』に関しては、「少ししゃべっただけでネタバレになりそう」と苦笑い。「せめて劇中のセリフをひとつだけ教えて」と木村に促され、「世間体もあるんだぞ!」というひと言を挙げ笑わせていました。

ふたつめは「クリエイターズ・ファクトリー部門」。再び奥山さんが登壇し、概要を説明していきます。「第5回沖縄国際映画祭」で、一切の垣根を取り払い、才能を探すコンペとしてスタートした「クリエイターズ・ファクトリー」。「京都国際映画祭」ではジャンルをさらに広げ、映像だけでなくアート全域にわたるコンペとして開催します。

ここでもさらにゲストが登壇。「沖縄国際映画祭」で行われた「第1回クリエイターズ・ファクトリー」で最優秀ニュークリエイター賞を受賞し、今回は初監督作品のR18文学賞vol.3『マンガ肉と僕』の完成披露試写会を行う杉野希妃さん、映像部門の審査員を務める映画監督の林海象さん、アート部門の審査員となるアーティストの名和晃平さんが、映画祭、そして京都への思いを語りました。杉野さんは京都で初監督作を撮影し、「そうそうたる監督の方々が撮影された場所で映画を作るのは、とても試されている感じがした」そう。林さんは「新しい才能を見つけられると確信している。型にはまらない新しい映画、映像に出会えたら」と期待をふくらませます。「最近の、特に美大生の傾向としては、おとなしい作品が多く、審査員が動揺するような作品がなかなか出てこない」という名和さんは、「この機会にそういうものをぶつけてもらい、お互い刺激し合えるコンペに」と呼びかけていました。

最後に紹介されたのは「アート部門」です。同映画祭実行委員・アート担当の上野公嗣は挨拶の中で「京都の歴史ある文化、アート、映画を改めて認識していただき、世界に発信していきたい」と抱負を述べ、「すべての方に楽しんでいただけるよう敷居は低くしているが、非常に質の高いアートが用意できました」と胸を張ります。

同部門のアートプランナーを務める、おかけんたも登壇。芸人としてはもちろん現代美術コレクターとしても知られ、アート関連の活動にも力を入れているけんたは、映画祭会期前、そして会期中に京都の各所で行われるさまざまなアートイベントをひとつひとつ丁寧に紹介していきます。トップを切って9月5日(金)からホテルアンテルーム京都で行われる「安斎肇×イチハラヒロコ展」を「素晴らしい出来。どなたでも楽しめる作品が展示されています」と絶賛したほか、ご存じ鉄拳の世界にどっぷり浸れる「『鉄拳』パラパラ漫画の世界展」や、京都市役所前広場で開催される「激突プロジェクト ヤノベケンジ×明和電機×石橋義正」など、多彩なラインナップが次々と明らかに。さらに、「先ほどお話ししていたんですが、ひょっとすると名和晃平さんが現代美術から見た“お庭”を作られるかもしれません」と、新情報も飛び出しました。

さらには、「アート部門」を彩るアーティストたちも壇上に勢ぞろい。「安斎肇×イチハラヒロコ展」からは、安斎さんとイチハラさんが見どころを解説。「かなり映画を意識した展示になっています」(安斎さん)、「安斎さんにリードしてもらい、ええ感じにできてます」(イチハラさん)と、それぞれ語りました。

「映画『燃える仏像人間』展」については、監督の宇治茶さん、エンディングテーマを歌った桜 稲垣早希がコメントを。紙に描いた人形を割り箸で動かして撮影するという特殊な技法で撮影された今作。展覧会には紙の人形500体が展示されるほか本編の上映もあるそうです。稲垣からは「ちょっと怖い雰囲気の映像なのに、私の歌は萌えアニメに出てきそうな感じで。監督からはギャップを狙ったと聞きました」という裏話も。

「激突プロジェクト ヤノベケンジ×明和電機×石橋義正」では、「何が起こるか詳しく言えないが、街の広場に巨大なロボットが現れます。映画が街の中に出てきたような光景が見られますよ」(ヤノベさん)、「子どもから大人まで楽しめるスペシャルなイベントを計画中です」(石橋さん)とのことで、明和電機も加わりどんな世界を作り上げるのか、注目が集まります。

記者会見もいよいよフィナーレ、最後に登場したのは京都出身芸人代表の今いくよ・くるよ! 漫才さながらのやりとりで笑わせた後は、「地元・壬生の映画館で1日中映画を見ていた」「映画館の娘さんと同級生やったので、タダで入れてもらったりね」と映画にまつわる思い出トークも。締めくくりには「京都は素晴らしい芸術の街。京都には三大祭りがありますが、それプラス『京都国際映画祭』をお祭りにしたい」(いくよ)と力を込め、強力バックアップを誓っていました。

この秋、京都の話題を独占しそうな一大イベント「第1回京都国際映画祭」。皆さんぜひ足を運んで、映画、そしてアートをたっぷり楽しんでください!